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ハスと三渓園のシンボル三重塔
朝のすがすがしい空気の中で、咲いたばかりのハスを楽しむことができるように、三渓園では毎年、早朝観蓮会が開催されています。 ハスの花は、明け方からゆっくりと開花し、午前7時頃に一番の見ごろを迎えます。 そして9時頃から再び閉じ始め、昼ごろには完全に閉じてしまいます。 こうしたハスの開花の特徴に対応して、早朝6時に開園になります。
この早朝観蓮会は昭和50年から毎年開催されており、今年で37回目です。 早朝観蓮会は見頃の時期の土・日・祝日に開催されますが、今年は7月16日から8月2日までのすべての土・日・祝日に開催されます。 例年は7月上旬からですが、今年はハスの開花が遅いのか中旬からの開催です。 早朝観蓮会は特別料金ではなく、通常の入園料で観賞することができます。
三渓園は、生糸貿易で財をなした横浜の実業家 原三渓(本名:富太郎)の元邸宅です。 17万5千平方メートル(約53,000坪)にも及ぶ広い庭園は、原三渓の手によって精魂込めて造られ、明治39年(1906年)に「三渓園」として一般に公開されました。
ハスは泥の中から清らかな花を咲かせることから、俗世間から現れた優れた人材にもたとえられ、インドでは聖者の花、中国では君子の花といわれました。 三渓園の創設者 原三溪がとりわけ好んだ花だといわれています。 現在は、三渓園の正門を入って右側の蓮池に咲いていますが、三渓在世中は大池全体に植えられていました。
ハス池
ハス池と三重塔
ハスの花が美しく池を彩る頃になると三渓は親しい人々を招いて、蓮見の茶会を催したそうです。 船遊びの趣向で催した茶会では、ある茶人が偶然流れてきた白蓮の蓮片を取り、梅干しを包んで食べたことを一同で褒めあうなど、大変風流なものだったようです。
現在、三渓園で生育しているハスは主に原始ハスです。これまで、種々の品種のハスが植えられてきましたが、背丈が高く繁殖力の強い原始ハスが残ったそうです。 原始ハスは一重咲きの大きな花で、開花1〜2日目は比較的濃い赤色ですが、3〜4日目には桃色に変化し、基部近くが白くなるのが特徴です。
原始ハスは、古来より日本にあったハスで、東大阪市善根寺町に自生していたものを、ハス研究で高名な大賀一郎博士が昭和11年に鑑定して「原始ハス」と命名しました。 大阪府の天然記念物に指定されています。 三渓園には昭和51年に舞妃蓮、太白蓮などと共に植えられたそうです。
大賀ハスは、昭和26年に千葉市の東京大学農学部検見川厚生農場で、大賀博士が縄文時代に咲いていた古代ハスの種3粒を発見し、そのうちの一粒の開花に成功したものです。 したがって、原始ハスと大賀ハスは咲いた花の形は似ていますが、異なるハスのようです。 違いの細部についてはよくわかりません。
ハス池のハス
三渓園のパンフレットやハス池の案内所にハスに関する詳しい説明が掲載されていました。 花が咲くときに音がするのか? 「ぽんっ」とハスが開花するとき音をたてるということは、昔から一般に伝えられてきたようです。 しかし、実際にはハスはゆっくり静かに開花するので、音は聞こえないそうです。 ハスの神秘的な美しさに酔いしれ、蛙が水の飛び込む音などを聞き誤ってしまったものが、人々に言い伝えて来られたのかもしれません。
明治31年、当時まだ学生だった生物学者の三宅驥一(きいち)が小石川植物園で開花を見守りましたが、結局、開花音を聞くことができませんでした。 昭和10年には生物学者たち(大賀一郎、牧野富太郎、三宅驥一ら)が上野不忍池で実地検証し、「蓮の開花は発音を伴わない」と結論を出したものの、『朝日新聞』紙上で議論が起きたため、翌11年にマイクロフォンで再調査しましたが、やはり音は聞こえませんでした。
ハスの花の咲き方 開花1日目 午前5時頃、外側の花びらがゆるみだし、1分間に約2mmの早さでゆっくり口を開け、1〜3cmの「とっくり型」になる。色も濃くなり、午前8時頃から閉じ始める。 開花2日目 夜中の午前1時頃から開き始める。午前7時から9時頃までに「おわん型」になり、色鮮やかになる。このころから閉じ始め、昼頃には完全に閉じる。
開花3日目 夜中の午前1時頃から開き始める。午前6時頃には「おわん型」、9時頃には「さら型」になる。花は最大に開くが、色はあせ、花びらも一ひら、二ひら散り始める。午後までに少し閉じるが、半開きの状態で終わる。 開花4日目 夜中の午前1時頃から開き始める。午前6時には完全に開き、花びらが散り始める。午後には一ひらもなくなり、花托だけが残る。
ハスの歌 ひらいた ひらいた なんの花が ひらいた レンゲの花が ひらいた ひらいたと思ったら いつのまにか つぼんだ
この歌に出てくる「レンゲの花」は春の野に咲くレンゲソウではありません。 「レン=蓮、ゲ=華」つまりハスの花のことなのです。 明治時代の遊びうたで、子供たちが輪になって手をつなぎ、うたを歌いながら外に広がったり、内につぼまったりして、ハスの花が開いたりしぼんだりするようすを表現しています。 これはハスの生態をよく表している童歌です。
蓮と睡蓮って同じ? 蓮と睡蓮は花がよく似ているため、よく混同されますが、次の点で違いが見られます。 蓮が水面から大きく立ち上がって咲くのに対し、睡蓮は水面からわずか上で花を咲かせます。 開花時期も蓮が盛夏の短い期間であるのに対し、睡蓮は5月から9月の初め頃まで比較的長い期間楽しめます。
蓮の地下茎はレンコンとしておなじみですが、睡蓮の地下茎はまるでワサビのような形をしていて食用にはなりません。 花の咲き方も少し違い、睡蓮は朝7時頃咲き始め、午後1時頃閉じてしまいます。この花の開閉を3日間繰り返し、4日目の花はやがて水に沈んでしまいます。 三渓園には蓮池の隣に睡蓮池があります。白い睡蓮が見頃でした。
風来坊、今年も地下鉄とバスを利用して、6時30分過ぎに三渓園に着きました。 ハス池の周りは早朝から多くの人で賑わっており、ハス池の周りの撮影スポットはカメラの放列です。三渓園では三脚を使用することができるのです。 しかし、ハス池の周りのスペースが比較的広いため、カメラの放列があっても、比較的ゆっくりと鑑賞することができます。
写真を撮りにくる方々は、開園前から待っているそうで、開演直後は一番混雑するようです。 7時30分を過ぎるとカメラマンの方々は次々と立ち去り、ハス池の周りは随分と空いてきます。 やはり、写真に興味のある方は、ハスを綺麗に撮れる時間帯をよくご存じのようです。 また、この時期はハスと三重塔が同時に眺められるハス池の北西部の特別公開されます。
開花1日目のハス おしべが開いていません
開花1日目のハス
今年は、早朝開園初日に訪ねましたが、ハスの咲いている数が随分多い感じです。 三渓園のホームページでも、「昨年よりは背丈は低いようですが花数は多く好調です」と紹介されていました。 これまで7月上旬から早朝開園が行われることが多かったですが、今年は7月16日からでハスの見頃の時期と早朝開園のタイミングがうまく一致したようです。
早朝観蓮会の開催日には、園内茶店「三渓園茶寮」で、赤だしや温泉卵、紀州梅干、コーヒーなどがセットになっている、早朝観蓮会限定メニューの朝粥(1000円)が提供されています。 早朝のさわやかな空気の中で、多くの方が食事を楽しんでいました。
アクセス バスを利用する場合 桜木町駅2番乗り場から8系統を利用するのが一番便利です。 平日と土曜日は始発が6時10分、日曜日は始発が6時14分です。 駐車場 正面入口に隣接して駐車場有り。乗用車とバス兼用駐車場のため、週末は混雑する。 駐車料金500円
三渓園の大池
入園料 大人500円 65歳以上300円、横浜市在住の65歳以上は無料です。 小人200円、第2土曜日は横浜市内在住の小・中・高校生は無料です。 関連のホームページ 三渓園 風来坊
三渓園