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中央広場のくるめつつじ
群馬県館林市のつつじが岡公園一帯は、室町時代から「つつじが崎」と呼ばれていました。 これは、野生の山ツツジが密生していた陸地(つつじが岡)が城沼に突き出ていた地形から名付けられたと考えられています。
伝説によれば、江戸幕府下の第7代館林城主榊原康政の側室「お辻の方」は美しく、城主に愛されていたことから正室のねたみをかい、その責めに耐えきれず、慶長10年に城沼に身を投げました。 里人はこれを悲しみ、その霊を弔うため、「お辻」「ツツジ」の音が互いに似通っていることから、その名にちなんで、ツツジを城沼の南岸に植え、その後、次第に繁殖して名園になったと語り継がれています。
見学コーススタート地点のつつじのトンネル
つつじのトンネル右側の日の出霧島
満開のツツジ
古来から自生していたややツツジの古木に加え、歴代城主が各地からツツジを移植するとともに、ツツジの保護、繁殖にも尽力したことが記録に残されています。 明治維新後、一時民間に払い下げられて荒廃しましたが、明治13年以降は歴代郡長と地元の協力によって復興が進み、今日まで引き継がれています。
現在、つつじが丘公園内には、50余品種・約1万株のツツジが植裁されており、世界に誇るツツジの名園として国内外に知られています。 江戸の世より花見客で賑わったつつじが岡公園へは、4月上旬から5月上旬にかけての花期になると、毎年40万人以上の人が、全国各地から訪れます。
散策路のツツジ
4月下旬から5月上旬の花盛りになると、朱紅色のヤマツツジ、紫紅色のオオヤマツツジ、真っ赤な本霧島、白色の白霧島、白琉球などが咲き揃います。 公園内はまるで燃ゆるがごときの壮観を極め、その景観は筆舌に尽し難く、ただただ訪れる人たちを驚かせます。
今年も4月15日から5月15日の間、つつじまつりが開催されました。 つつじまつりの期間は、つつじが丘公園は午前7時から午後6時の間は、有料になります。 「咲きはじめ」と「見頃過ぎ」は300円で、「見頃」の時期が600円です。
今年の4月は寒い日が多く、花の開花が随分遅くなりました。 ここ数年は4月25日頃には満開となっていましたが、なかなか開花が進まず、入園料もなかなか600円になりません。 5月3日にやっと「旧公園:満開、新公園:8分咲きとの開花情報が出され、入園料も600円になっていました。
また、5月3日に館林に行ったネットの友人から「満開で綺麗でした」との情報がありました。 ということで、早速5月4日に館林のつつじを訪ねることにしました。
館林にツツジやあしかがフラワーパークの藤へのアクセスを考慮して、近年はこの時期に、東急田園都市線長津田駅から東武伊勢崎線太田駅までの直通臨時列車「フラワーエクスプレス号」が運行されています。 横浜から栃木までの直通電車で大変便利ですが、最近は利用者が多く、途中駅の「あざみ野」では座ることができません。
このためフラワーエクスプレスは諦めて、朝早く出てフラワーエクスプレス号と同じ経路で、8時30分に館林駅につきました。 生憎シャトルバスが出た直後でしたが、つつじが丘公園の近くを通る路線バスがありましたので、そのバスで「つつじが丘公園入口」まで行きました。 バス停から正面入口までは徒歩5分程度でした。
正門入口から入り、30m程度進んだ左手が中央広場です。 満開には少し早いかなという感じのクルメツツジが出迎えてくれました。 中央広場には記念撮影できるように「つつじが岡公園入園記念」の看板が数カ所準備されています。 まだ9時前だというのに、バスツアーの観光客が次から次へと到着します。
中央広場の右手にあるツツジのトンネルが見学のスタート地点です。 無料ガイドツアーもここからスタートします。 無料ガイドをされている方の話では「過去の統計ではつつじが丘公園のつつじの満開の時期は4月29日ですが、ここ数年は暖冬のため4月25日前後に満開を迎えていました。今年は4月が寒かったため、開花の時期が遅れ、5月になってやっと満開を迎えました」ということでした。
トンネルの入口付近のツツジは満開でした。 トンネルに中程に三叉路があり、そこを右に曲がり少し進むと、国の名勝に指定されている区域の中央部となります。
つつじが岡公園を代表するツツジには、ヤマツツジ、オオヤマツツジ、キリシマツツジがありますが、この付近にはキリシマツツジやヤマツツジの古木が数多く植えられています。 さらに奥へ進んだところが、ヤマツツジの巨樹群です。
城沼
ヤマツツジの巨樹群付近は、歴代城主が、各地よりツツジを移植する以前から、ヤマツツジが自生していた所で、樹齢の古いものは800年を超える日本一のヤマツツジの名木が見られるところです。 今年はヤマツツジも大部分が見頃でした。
日本には各地にツツジの名所がありますが、つつじが岡公園のツツジは、次の6つの特徴があります。 こうした特徴から、世界にほこる日本一のツツジの名園ということができます。
前方の高台は展望台
展望台からの展望
特徴1:樹齢800年を超えるヤマツツジの巨樹群が、自然形のままで保存されています。(歴史的な価値) つつじが岡公園には、古代から自生していたヤマツツジと、城主が他より移植したヤマツツジを加え、これらの樹齢800年を超える巨樹群が、今なお自然形のままで生長し続けています。 樹齢や樹形上からもまさに日本一の風格を備えたツツジと言えます。 風雪に耐え、生き続けるヤマツツジの巨樹群は、花見客の絶賛を浴びています。
特徴2:日本における園芸ツツジ栽培史上、特記すべき江戸キリシマ古木群が多数保存されています。(品種上からの価値) 江戸末期の文化から天保にかけて、江戸大久保のツツジが有名であったことは広く知られています。 その最盛期には、花の種類も70余種にも及んだと言われています。 これらのツツジは、明治から大正にかけて、大久保の復興した各つつじ園に残されていたものと考えられています。
キリシマツツジ古木群
特に古来より有名であり、珍重されてきた江戸キリシマ(江戸で生産されていたキリシマツツジの総称名)系の本霧島や紅霧島などの品種が、殆ど含まれていたものと思われます。 大正4年5月、館林町有志杉本八代氏は、ツツジの名所ここ大久保萬花園より、本霧島、紅霧島、白霧島など多数の江戸キリシマ系の品種を主に購入し、つつじが岡公園に寄付しました。
このツツジは、現在、樹齢100年の大株となり、良好な状態で新公園に保存されています。 このように多数の江戸キリシマ系の品種を大株で保存しているつつじ公園は、日本のどのつつじ公園にも見ることができません。 江戸キリシマ系の品種を研究する上からも極めて大切なツツジであり長く保存しなければなりません。
散策路のつつじ
特徴3:歴代城主から現在まで保護育成が図られています。(永続的な管理) 古代よりつつじが崎に自生していたヤマツツジ群と、歴代城主が、各地より移植したツツジは、明治以降もツツジ保護のため手厚い育成管理が継続して行われてきました。 現在は古木ツツジが多いため、近代技術を施した肥培管理が、一株一株に実施されており、こうしたことは他に類がありません。
特徴4:学者等が日本一、世界一の折り紙をつけました。 昭和52年4月28日、アメリカのツツジ・シャクナゲ協会長デビット・リーチ氏が来園し、世界一の折り紙をつけました。
また、昭和56年3月、東京大学理学部教授理学博士山崎敬氏は、「館林のツツジの価値は、花期の美しさはもちろんですが、盛衰はあっても、数百年にわたって、日本の園芸ツツジの発展と期を同じくして、連綿と栽培されてきたことです。 これは周辺の多くの人々の協力があってこそ出来ることで、日本の園芸植物では他に見られない特徴で、おそらく世界的にも例のないことと思います。」と言葉を寄せています。
特徴5:国際花と緑の博覧会で最高の「名誉賞」を受賞し、日本一の折り紙がつけられました。 平成2年4月より開かれた国際花と緑の博覧会に、館林市より推定樹齢450年の桔梗咲き霧島古木2株を出品しました。 このツツジは世界53か国、出品数6507点の中から「ツツジの大きさ」「咲かせた技術」「優れた景観」等の点が他に類が稀であると最高の「名誉賞」に輝きました。
タヌキのお出迎えです!
特徴6:世界初の宇宙ツツジが生育しています。 館林市出身の宇宙飛行士向井千秋さんの乗ったスペースシャトル「コロンビア」が、日本時間の平成6年7月9日、米国のケネディ宇宙センターから打ち上げられました。 この時、搭載された市の花ヤマツツジなどが、大きな夢を秘めて、順調に生育しています。 世界で初めての宇宙ツツジが生育していることは、日本一のツツジの名園に、新たな夢と感動を与えています。
関連のホームページ 県立つつじが岡公園 館林のつつじ その2へ 風来坊