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大作り花壇
第一露地花壇
皇室ゆかりの伝統を受け継ぐ新宿御苑の菊花壇展が、今年も11月1日から15日まで開催されました。 今年は天皇陛下御即位20年慶祝記念として、日本菊花協会の特別展示や、栽培ヤードの公開、インフォメーションセンターにおける解説展なども行われ、例年以上に充実した展示内容となっています。
新宿御苑の菊花壇は、回遊式の日本庭園内に上屋(うわや)といわれる建物を設け、特色溢れる花々を独自の様式を基調に飾り付けた花壇です。 それぞれの花壇は、中央入口から入り、順路に沿って歩いていくと、最も美しく観賞できるようにデザインされています。
第二露地花壇
懸崖作り花壇
懸崖作りに用いる菊は小菊で、分枝性の旺盛なものを摘心によって仕立てます。 この花壇に陳列している品種は、小菊のなかでも一重咲きの山菊とよばれる品種を用いています。
伊勢菊・丁子菊・嵯峨菊花壇
伊勢菊
伊勢菊・丁子菊・嵯峨菊花壇 木の素材をいかしたよしず張りの上家に、伊勢菊32株、丁子菊32株、嵯峨菊25株を配色よく植え込んだ花壇です。 伊勢菊は、伊勢地方(三重県松阪)で発達した菊です。花びらが平たく、咲き始めは縮れていますが、開花するにしたがって伸び、垂れ下がって満開となります。 花びらが長く垂れ下がるほど良い花とされています。
丁子菊は、昔、おもに関西地方で作られた菊です。 花の中心の筒状の花びらが香料の丁子の花に似ていることから、この名前がつきました。 外国では「アネモネ咲き」とよばれ人気があります。 花びらは平たいものや匙のような形のものがあります。
丁子菊
嵯峨菊
嵯峨菊は、嵯峨天皇の御愛の菊として、京都の大覚寺に植えられたものが始まりといわれる、もっとも古い歴史をもつ古典菊です。 花びらが平たく、咲き始めは乱れ咲きに開き、次第に花びらがよじれて立ち上がり、全部立ちきって満開となります。雅趣に富んだ菊です。
大作り花壇 木の素材をいかした、障子屋根とよしず張りの上家に、大菊の大作り菊を陳列した花壇です。 大作りは1本の株から何百というたくさんの花を咲かせるように仕上げたもので、菊のなかでもとくに発達の旺盛な品種を用います。 この作り方で一番大切なことは、多くの花を咲かせることはもちろん、個々の花においても枝や葉が均一で、花の大きさが揃いかつ開花期が同時でなければなりません。
裾野の輝 675輪
飾りつけは個々の花をこんもりと、そして半円形に整然と結い立てるもので、この栽培と仕立てには高度の技術が必要とされています。 この様式は新宿御苑独自の技術であり、菊花壇の中でも見ごたえのある花壇です。 全国各地の菊花壇展でみられる千輪作りの先駆けにもなっている菊です。
江戸菊花壇
江戸菊花壇 木の素材をいかした障子屋根の上家に、1株27輪仕立ての中菊29株を3列の互の目に奥行きをつけて植え込み、篠立て作りにした花壇です。 中菊は関西の大菊に対し、江戸において流行したので、江戸菊ともよばれています。
酔美人
また、花びらが様々に変化することから、狂菊ともよばれています。 その狂い方によって、「追抱(おいがかえ)」、「褄折抱(つまおれがかえ)」、「丸抱」、「乱れ抱」、「自然抱」、「露心抱(ろしんがかえ)」「管抱(くだがかえ)」の7通りの名前がつけられています。
花びらは平たいもの、管のようになったもの、匙のようになったものの3種類あります。 この菊は花びらが様々に変化する狂いの芸が特徴で、御苑独自の仕立てと、全体の色彩の変化と配列の美しい花壇です。 新宿御苑の菊花壇の中でももっとも古い歴史のある植え込み様式です。
雲雀の床
仮寝の夢
星月夜
小倉山
一文字菊、管物菊花壇
一文字菊、管物菊花壇 木の素材をいかした障子屋根の上家に、一文字菊13品種97株、管物菊13品種97株の計194株を22列に1本仕立てで植え込んだ花壇です。 一文字菊は、花びらの枚数が16枚前後の一重咲きの大輪菊で、花びらが平たく幅広く伸びるのが特徴です。 花の形から、御紋章菊とも呼ばれています。
管物菊とは、すべての花びらが管状になっている菊で、花びらの太いものを太管物菊、細いものを細管物菊、その中間の太さのものを間管菊とよんでいます。 この花壇に用いるのは細管物菊で、一般に栽培されている玉巻性のものではなく、細く長く雄大な花びらを持つ品種で、新宿御苑で独自に作り上げた品種を用いています。 一輪一輪の優美さはもちろんのこと、花全体の色彩の変化や調和する建物など、花壇全体の総合美が鑑賞できます。
夕ごり
竹取
春の波
夕月夜
肥後菊花壇
肥後菊花壇 竹の素材をいかしたよしず張りの上家に、35株の肥後菊を3列の互の目に植え込んだ花壇です。 肥後菊は、18世紀末に肥後(熊本)地方で、藩主・細川公が藩政施行にあたり文化政策のひとつとして、栽培が始められ発達した古典菊です。
肥後菊
清廉なこの菊を例に、武士道の意義を説いたといわれています。 藩外への流出を固く禁じるなど、長い間門外不出の秘花でしたが、藩士・秀島英露が栽培方法や花壇様式の作法を考案した、『養菊指南書』を著し、全国に広まりました。 花は一重咲きで花びらは平たいものと管状のものがあります。 花びらと花びらの間に隙間があるのが特徴です。
大菊花壇
大菊花壇 木の素材をいかした障子屋根のよしず張りの上家に、大菊の厚物と厚走りの39品種311株を1本仕立てにして、黄・白・紅の順序に、45度の角度で1列1種として植え込んだ花壇です。 配色の美しさが昔の神馬の手綱の模様に似ていることから、このような植え込みの技法を手綱植えとよんでいます。
厚物は、花びらの先端が中心に向かってうろこ状に丸く盛り上がって、手まりのような形になるのが特徴です。厚走りは、一番外側の花びらが長く飛び出ています。 1本1本の花の美しさはもちろんのこと、各列に並んだ花の整形美や色彩の変化、これに調和する建物の総合美を鑑賞できます。
加茂
弥生の空
菊の栽培施設
懸崖用小菊
日本に園芸品種の菊が渡来したのは、奈良時代末から平安時代はじめといわれています。 その後、室町、江戸時代と発達をとげ、明治元年(1868年)に菊が皇室の紋章に定められました。 明治11年(1878年)、宮内省は皇室を中心として菊を観賞する初めての「菊花拝観」を赤坂の仮皇居で催しました。
江戸菊の栽培
江戸菊
新宿御苑の菊の栽培施設では、古典菊の品種改良が行われています。 菊は同じ場所で栽培を続けていると、だんだん生育が悪くなるそうです。 このため畑をしばらく休ませながら、場所を変えて栽培するとのことです。 畑の周りにネットが張られていましたが、カラスよけだそうです。
現在各地の菊花展で見られる和菊は、江戸時代に品種改良が重ねられてきた菊がもとになっています。 新宿御苑では、地方で発達したそれらの古典菊と呼ばれている江戸菊、伊勢菊、嵯峨菊、肥後菊、丁字菊などの系統を多数保有しています。 これらの品種は長い間栽培していると、次第に株が弱くなり維持できなくなるとのことで、新宿御苑では毎年菊の育種を行い、古典菊の保存に取り組んでいるとのことです。
丁字菊の栽培
丁字菊
アクセス 新宿御苑のメインゲートである新宿門は新宿駅から徒歩10分です。 千駄ケ谷門はJR千駄ヶ谷駅から徒歩5分です。 このほかに、大木戸門があります。 駐車場 駐車料金は3時間まで500円。以後30分ごと100円です。
入園料 200円 毎週月曜日は休園日です。 関連のホームページ 新宿御苑 風来坊