
砕氷艦「しらせ」と見学者の列
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砕氷艦「しらせ」
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新しい砕氷艦「しらせ」(南極観測船「しらせ」が、今年の5月20日に京都府舞鶴市のユニバーサル造船所で完成しました。
その後、母港の海上自衛隊横須賀基地に開港され、5月30日(土)と31日(日)に一般公開されました。
もちろん完成したばかりですから、初めての一般公開です。
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5月30日(土)は小雨の降る生憎の天候でしたので、晴れ間の出てきた5月31日に見学に行きました。
初めての一般公開ですから大変な混雑だろうと思いましたが、案の定横須賀に向かうJR横須賀線の車内には大きなカメラを抱えている人を何人も見かけました。
マニアの方々だろうと思います。
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砕氷艦「しらせ」と見学者の列
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砕氷艦「しらせ」と護衛艦
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砕氷艦「しらせ」と護衛艦
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JR横須賀駅に11時前に到着しましたが、JR横須賀駅から徒歩5分程度の海上自衛隊横須賀基地の間は、「しらせ」を見学に行く人、見学を終わって帰る人で賑わっていました。
基地の正門から「しらせ」の係留されている岸壁までは500mほどありますが、この間も三々五々と人が続いていました。
岸壁に到着すると長蛇の列ができており、乗船するまでは30分ほど待たされました。
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岸壁に高さ2m程度の台車が置かれており、台車の上から「しらせ」の甲板まで見学者用の桟橋が2本架けられていました。
乗船用と下船用の桟橋です。
台座が置かれているのは、「しらせ」の甲板が高いため、桟橋の勾配を緩くするためとのことです。
桟橋の勾配は、潮の干満で変化するとのことでした。
隣の乗組員用の桟橋は急勾配でした。
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砕氷艦「しらせ」とイージス艦「きりしま」
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「しらせ」に乗艦する見学者
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乗船する桟橋から 岩壁は見学者の長い列
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船内には一方通行の見学通路が設けられており、狭い通路に沿って急な階段を上ったり降りたりしながら、船内を見学できるようになっていました。
また、見学通路のところどころにパネルが置かれており、南極の様子、越冬隊員の様子、「しらせ」の性能要目などが理解できるようになっていました。
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見学通路は一方通行ですが、ブリッジ、前部側の甲板、そして後部の格納庫付近などの広い部分は比較的自由に見学できました。
また、「しらせ」の隣には多数の護衛艦が係留されており、艦内の見学はできませんでしたが、「しらせ」から写真を撮ることができました。
一番遠くには初代の「しらせ」も係留されていました。
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桟橋を登ると見学通路の入口です
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見学経路にしたがって急な階段を一番上まで
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見学経路にしたがって一番上まで
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日本の砕氷艦(南極観測船)としては「しらせ」が4隻目です。
昭和31年(1956年)に日本初の南極観測に向かった「宗谷」が、初代の南極観測船です。
「宗谷」はもともと貨物船ですが、その後、海上保安庁の灯台補給船として使用していたものを、南極観測用に転用した船です。
海上保安庁に所属し、昭和31年〜37年の間、第1次〜第6次の南極地域観測協力に参加しています。
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「宗谷」はその後、巡視船として16年間北海道で活躍したのち、昭和53年10月に退役し、現在は東京・お台場の「船の科学館」の前に係留され、一般公開されています。
「これで本当に南極まで行ったのか」と思えるほどの、小さな船です。
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上部からの展望 前方は東京湾
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上部からの展望 乗船用の桟橋はかなりの勾配です
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逆方向は長い行列
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また、2代目の「ふじ」以降は海上自衛隊に所属し、海上自衛隊の隊員が船の運航に当たっています。
すなわち、乗組員は海上自衛隊の隊員です。
したがって、母港も海上自衛隊の横須賀基地になっています。
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日本の砕氷艦(南極観測船)の要目の比較は次のとおりです。
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船名 |
宗谷 |
ふじ |
初代しらせ |
しらせ |
建造年
(西暦) |
昭和31年
(1956年) |
昭和40年
(1965年) |
昭和57年
(1982年) |
平成21年
(2009年) |
所属 |
海上保安庁 |
海上自衛隊 |
海上自衛隊 |
海上自衛隊 |
全長(m) |
83.3 |
100.0 |
134.0 |
138.0 |
幅(m) |
12.8 |
22.0 |
28.0 |
28.0 |
深さ(m) |
9.3 |
11.8 |
14.5 |
15.9 |
喫水(m) |
6.0 |
8.1 |
9.2 |
9.2 |
乗員(名) |
77 |
200 |
170 |
179 |
基準排水量(トン) |
2,736 |
5,250 |
11,700 |
12,500 |
軸馬力(馬力) |
4,800 |
12,000 |
30,000 |
30,000 |
推進方式 |
ディーゼル |
ディーゼル電気 |
ディーゼル電気 |
ディーゼル電気 |
就役期間 |
昭和31年
〜昭和37年 |
昭和40年
〜昭和57年 |
昭和58年
〜平成19年 |
平成21年
〜 |
南極地域観測
協力行動 |
第1次
〜第6次 |
第7次
〜第24次 |
第25次
〜第49次 |
第51次
〜 |
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ブリッジは見学者で超満員
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初代「しらせ」は昭和57年(1982年)から20年以上運用され、その老朽化に伴い後継艦が必要になりましたが、予算がなかなか認められず、やっと平成19年3月に建造に着手できたそうです。
平成20年4月16日に進水し、その後各種装備を搭載して、昭和21年5月20日に完成、就役しております。
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ブリッジ
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船の位置がわかるGPS
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操縦装置
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ブリッジ
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「しらせ」は南極地域観測協力をするわが国唯一の砕氷艦であり、その任務には物資及び人員の輸送、観測支援などがあります。
このため「しらせ」にはいろいろな特徴があります。
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「しらせ」の船首部分 穴が空いています
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「しらせ」の最大の特徴は、砕氷することができることです。
厚さ1.5mまでの氷については、強力な推進力により、速力3ノット(時速5.6km)で連続的に砕氷して前進することができます。
それ以上の厚さの氷については、一旦艦を200m〜300m後進させ、最大馬力で前進して氷に乗り上げ、艦の自重で氷を砕くそうです。
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「しらせ」と「護衛艦きりしま」の船首
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観測隊員の個室 2人部屋の2段ベッドです
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この場合は、艦内の水などを移動して、前部側を重くして氷を砕くとのことです。
このため、艦首部分の構造が隣の護衛艦とはまったく異なっています。
護衛艦は高速力を出すため、水の抵抗が少なくなるように艦首が尖っていますが、しらせは氷に乗り上げるために艦首部分が丸くなっています。
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「しらせ」が最大何mの厚さの氷を砕くことができるかについては公表されていません。
また、艦首部分に穴が開いていますが、雪を溶かすための散水装置で、砕氷補助設備とのことですが、細部はわかりません。
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観測隊員公室(休憩室)
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観測隊員休憩室&食堂
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医務室
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「しらせ」は初代「しらせ」よりも800トン増加し、一回り大きくなったことから、輸送可能物資が約100トン増加し1100トンに、観測隊員等の定員も80名に増加しております。
また、南極大陸で行動できる大型のCH−101ヘリコプター2機及び小型ヘリコプター1機の計3機を格納できる格納庫を備えています。
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理髪室
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理髪室
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予算の問題により、初代「しらせ」の退役と2代目「しらせ」の就役の間に、1年の間隔があいています。
そのため、平成20年(2008年)の第50次観測隊員は、文部科学省がオーストラリアから民間砕氷船オーロラ・オーストラリスをチャーターして、南極に送り込みました。
奇しくもこの砕氷船は、先代「しらせ」によって南極で救助された船です。
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神棚
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ラッパ
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救命浮環
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船籍国 |
アメリカ |
ドイツ |
ロシア |
中国 |
オーストラリア |
日本 |
船名 |
ヒーリー |
ポーラーシュテルン |
タミール |
雪龍 |
オーロラオーストラリス |
しらせ |
建造年 |
1999年 |
1982年 |
1989年 |
1993年 |
1990年 |
2009年 |
全長(m) |
128 |
118 |
150 |
167 |
95 |
138 |
幅(m) |
25.0 |
25.1 |
29.2 |
22.6 |
20.3 |
28.0 |
深さ(m) |
8.9 |
13.6 |
17.2 |
- |
- |
15.9 |
喫水(m) |
8.9 |
11.2 |
9.0 |
9.0 |
7.9 |
9.2 |
満載排水量 |
16,200 |
15,000 |
19,600 |
21,000 |
8,000 |
20,000 |
軸馬力 |
30,000 |
19,200 |
48,200 |
- |
13,400 |
30,000 |
砕氷能力
(氷厚-船速) |
1.37m
3ノット |
1.5m
2ノット |
1.8m
2ノット |
1.1m
1.5ノット |
1.2m
2.5ノット |
1.5m
3ノット |
推進方式 |
ディーゼル電気 |
ディーゼル電気 |
原子力タービン電気 |
- |
ディーゼル電気 |
ディーゼル電気 |
使用目的 |
夏期北極で観測活動 |
極地観測、隊員/物資輸送 |
北極海、航路啓開 |
南極観測、隊員/物資輸送 |
南極観測、隊員/物資輸送 |
南極観測、隊員/物資輸送 |
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格納庫
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南極の氷
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南極の氷
南極大陸の面積は、日本の面積の約37倍といわれています。
大陸には、厚い氷が覆っていてその氷は厚いところで4500m、平均で1850mあります。
この氷は地球上の氷の約90%(9%がグリーンランド)を占めており、南極の氷がすべて融けると海面は約70mも上昇するといわれています。
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南極の氷は、数十万年前から積もり積もった氷晶(ダイヤモンドダスト)や雪が圧縮されて氷となったものです。氷は自重によって大陸の外側に移動し、一部は海にせり出して「棚氷」となります。
「棚氷」は、潮汐等の影響で割れて氷山となるとのことです。
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南極の石
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係留中の護衛艦 一番遠くが初代「しらせ」
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係留中の護衛艦
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「しらせ」の格納庫に「南極の氷」が展示されていました。
この氷は、大陸から流れ出した氷山から切り取ったものだそうです。
北極の氷山の形はデコボコ型が多いですが、南極の氷山は平らな切りもち状だそうです。
そのためテーブル氷山とも呼ばれているそうです。
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「しらせ」の格納庫に「南極の氷」が展示されていました。
この氷は、大陸から流れ出した氷山から切り取ったものとのことです。
北極の氷山の形はデコボコ型が多いですが、南極の氷山は平らな切りもち状だそうです。
そのためテーブル氷山とも呼ばれているとのことです。
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係留中の護衛艦と初代「しらせ」
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係留中の護衛艦と横須賀の町並み
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係留中の護衛艦
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南極の氷でパチパチという音を聞きながらジュースや水割りを飲むのが大人気だとか!
一度そういう風情のある雰囲気でお酒を飲んでみたいものです。
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ヴェルニー公園からの展望
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