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横浜みなとみらい・工作船展示館 (H19.1.27)


不審船航跡図



工作船展示館


みなとみらい21の赤れんが倉庫2号館の海側広場の傍らにある、工作船展示館(海上保安資料館横浜館)は、わが国周辺海域の現状と海上警備の重要性などを理解してもらうことを目的として、平成16年12月10日に開館しました。


工作船展示館には、平成13年12月22日に発生した、九州南西海域不審船事案にかかる工作船及び回収物などが展示されています。



九州南西海域における工作船事件(不審船事案)の概要

平成13年12月22日、海上保安庁は防衛庁(現在の防衛省)から九州南西海域における不審船情報を入手して、直ちに巡視船・航空機をその海域に急行させて、不審船を捕捉するための追尾を開始しました。


工作船の船内配置図



工作船の主な設備等の設置状況


しかしながら、不審船は巡視船・航空機による度重なる停戦命令を無視して、ジグザク航行するなどして逃走を続けました。


このため巡視船は、射撃に関する警告を行った後、20ミリ機関砲による上空・海面への威嚇射撃及び威嚇のための船体への射撃を行いました。



これに対して、不審船は逃走を継続し、かつ巡視船に対して自動小銃及びロケットランチャーによる攻撃を行ったため、巡視船は正当防衛射撃を実施しました。


不審船による攻撃のため海上保安官3名が負傷すると共に、巡視船も大きな被害を被りました。

一方、不審船は自爆と思われる爆発を起こし、奄美大島から西方約390km付近において海底に沈没しました。


燃料タンクの配置状況



工作船の船首部分


工作船(=不審船)は沈没から約9ヶ月後の、平成14年9月11日に海底から引き揚げられました。


工作船は、平成15年5月から平成16年2月の間、東京お台場の船の科学館で公開されていましたが、約10ヵ月ぶりに横浜で公開されることになりました。


工作船の主な特徴


 船名:長漁3705

 全長:29.68m

 型幅:4.66m

 型深:2.30m

 総トン数:44トン

工作船の船首部分


工作船の後部甲板


主機関:ロシア製高速ディーゼルエンジン 4基

出力:約1100馬力×4=約4400馬力

推進器:3翼固定ピッチプロペラ 4基

速力:約33ノット(時速61km)

航続距離:33ノットで1200海里(約2200km)

7ノット(追跡時の速力)で3000海里(約5500km)



小舟格納区画

この工作船の最大の特徴は、小さい船にもかかわらず、さらに小舟と搭載していることです。

機関室の後方の区画は「小舟格納区画」となっており、同区画の最前方は小舟の船首部を格納するために、中央部で第2機関室内に張り出した構造になっています(上の図面参照)。


工作船の後部船内 ここに小型舟艇を搭載



高速を出すためにプロペラは4基です



高速を出すためにプロペラは4基です


また、小舟格納区画の後端に船尾があり、小舟を出し入れするために、船尾は中央部で左右に分かれた観音開き式の扉になっています。

同区画の側面には両舷とも燃料タンクが設けられており、船底側にはバラストタンクが設けられています。

燃料タンクの上には、小舟用燃料の仮設タンク4個が設置されていました(上の図面参照)。



船尾(小舟格納時の様子)

観音開きの船尾扉には、内部の水密性を確保するためと推察されるパッキンが設けられていました。

また、両舷扉上部には、開放状態を保つため人力で操作する支柱が設けられ、左舷扉は船内側に設置されたねじ込み式鋼管を人力で回すことによって、船外側の下端でくさび形金物により右舷扉と併せてロックされる構造となっています。


第1機関室



工作船に搭載された小型舟艇 スクリューは3基です



搭載艇の船内配置図


小型舟艇の特徴

 全長:11.21m

 全幅:2.5m

 深さ:0.95m

 喫水:0.6m

 総トン数:2.9トン



主機関:スウェーデン製ガソリン船内外機 3基


出力:約300馬力×3=約900馬力

推進方式:アウトドライブ

推進器:3翼固定ピッチプロペラ 3基

最大速力:約50ノット

航続距離:約150海里(速力50ノット時)


搭載艇の船内配置図



小型舟艇(搭載艇)


主船体(搭載艇)


船型はV型の滑走艇タイプで、船体はFRPです。

通常のFRP艇に比べ板厚は薄く、軽量で、強度は低いものと考えられとのことです。



一般配置(搭載艇)


甲板下に船首から、「空所」、「倉庫区画」、「操舵室」及び「機関区画」が配置されています。

倉庫区画内には燃料タンク3個が格納されています。

操舵室は、船体中央直後に配置されています。

機関室には、ガソリン船内機3基が装備されています。


小型舟艇(搭載艇)



小型舟艇(搭載艇)のスクリュー


ウ 特殊構造(搭載艇)

特殊構造の一つは、操舵室の囲壁が昇降式となっていることです。

母船から海に出て航走する際には囲壁を持ち上げて固定し、母船に収用する際は囲壁を下げた状態で格納したものと考えられます。



また、倉庫区画に海水を流入させたり、排出させることができる仕組みがあり、これを利用して母船の小舟格納区画への出し入れを容易にしたり、沿岸部への接近時に船体を沈めて、存在を目立たなくしていたのではないかと考えられています。


そのほかにも母船への搭載や沿岸での活動を容易にするための、さまざまな特殊構造が設けられているようです。


ゴムボート


搭載されていた武器等


潜水装具


工作船の国籍


回収した船体その他の証拠物件を分析した結果に加え、平成14年9月に行われた日朝首脳会談の場において、金正日総書記が軍部の一部が行ったと思われる旨の発言を行ったことなどから総合的に判断して、この不審船事案にかかる船舶は「北朝鮮国籍の工作船」であり、同船の乗組員についても「北朝鮮国籍」であることが特定されています。


工作船の活動目的

平成14年に陸揚げした工作船から、多数の証拠物件が回収されました。

綿密な捜査が行われた結果、

@この工作船は、九州周辺海域で覚醒剤の取引きに使用されていた疑いが濃厚であること、
A工作員の不法出入国等、他の重大犯罪にも利用されていた可能性があること、
B国内に協力者が存在している可能性があること

などが明らかになっています。


水中スクーター



82ミリ無反動砲(B−10)に類似

漁船への偽装

工作船は、船首両舷に船名「長漁3705」と、船尾に船籍港を示す「石浦」(中国浙江省に存在)と記載があり、中国漁船に偽装していたと見られていましたが、日本漁船にも容易に偽装できる構造・仕組みでもあることから、犯罪目的のために特別に建造されたものと考えられます。

船体の船名及び船籍港の表示部分に鉄枠が設置されており、船名を表示した板が交換でき、任意の船名に偽装できる構造になっています。



上部構造物


先方より「操舵室」、調理等を行う「居住区画」及び「14.mm対空機関銃の格納区画」となっています。

これ以外に船内には居住用の区画がないことから、乗組員全員は操舵室を含む狭い上部構造物内で仮眠、調理等を行い、生活していたものと考えられます。



ロケットランチャー&軽機関銃



自動小銃

船首等の特徴

船首の特徴としては、古い型の延縄漁船あるいは巻き網漁船に似た船形となっていますが、喫水線下の形状に関しては漁船船型とは大きく異なる高速航行のためのV型船型となっています。

また、外販の厚みも日本の同程度の漁船に比べて極めて薄く、フレームの間隔が狭いなど、構造的にも通常の漁船とは大きく異なっています。

こうした特徴から、特殊な用途、任務のために建造された特別の船舶であり、日本に一般漁船が輸出され、改造されたものではないとのことです。



日本の缶詰


日本の缶詰



2連装機銃


口径 14.5mm対空機関銃

ロシア製ZPU―2と推定

最大射程:7000m

有効射程:2000m


14.5mm機関銃



金日成バッチ


休館日
:毎週月曜日

入館料:無料

関連するホームページ
 
 海上保安資料館横浜館


            風来坊

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