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最終工程の天日干し作業
吉野川両岸の山里の村・大豊町
自然と伝統文化の里・高知県大豊町に、全国でも珍しい完全発酵茶が生産されています。 遠く藩政時代(現在記録に残る一番ふるい時代・それ以前のことは記録が残っていないので分からない)からの伝統が今なお続いているのです。 碁石茶のルーツを辿っていけば中国雲南省の少数民族・プーラン族の酸茶に行き着くとか、碁石茶のふるさとは、ミャンマーも含め中国雲南省付近とされています。
50年ほど前までは生産者も多く、20トンほど生産されていたようですが、時代の変化の中で多くの人達が村を去り、生産者達も高齢となって止めていき、次第に少なくなってきました。 10数年前には、とうとう小笠原正春さん(昨年末にご逝去)ただ一人となったのです。
小笠原さんの作業場
刈り取り作業・中央部は刈った後
この碁石茶は、その昔は背負い籠に背負い、瀬戸内地方(主として香川県)まで歩いて売りに行ったそうです。 今でも香川県の塩飽(しあく)では碁石茶で作る「塩飽茶粥」が祭のときなどに食べられていると聞きます。 お茶を売ったあとの背負い籠は、瀬戸内で買った塩を担いで帰ったとか。 昔の山での暮らしの厳しさが伝わってきます。
現在では、大豊町役場は、従来の「伝統文化」としての位置づけから「地場産業」として位置づけて見守り、生産者も増えているようです。 ところで、四国の真ん中に位置するところ、四国山脈の真ん中の大豊町東梶ヶ内の小笠原さん方では、6代目・小笠原章富さん(正春さんの長男)が引き続き碁石茶の生産をしています。
作業場へ運搬
蒸し桶に詰める
今では、マスコミや各大学の研究者の訪問・取材が大変多くなっているようですし、高知大学でも碁石茶の研究・分析をしていると聞きます。
斜面を利用した焚口
各大学の研究で、中国茶よりも乳酸菌が多く(ヨーグルトの20倍!)、抗酸化作用があり、中性脂肪やコレステロールを下げる働きがあるという研究結果がでているようです。 また、飲んでいる人からは、「胃腸にいい」「便秘にいい」「ダイエットにいい」「二日酔いにいい」「貧血にいい」「糖尿にいい」などの評判が寄せられているようです。
蒸しあがった茶葉を広げ冷まします
じっくりと蒸しあげます
枝やゴミを取り除き一次発酵の室へ
ところで6代目・小笠原章富さんは、20年以上に亘り父君のもとで碁石茶造りを経験し、4年前、会社を定年退職してからは、高齢となった父君の見守る中、「さきやり」として、「親父がこう言った」「親父がこうした」と、伝統を頑固に守り、碁石茶を造ってきました。
今年、6月14日、お日柄の良いこの日に、今年初めての茶を刈るというのでお訪ねしました。 自宅周辺の山の斜面に植えられた山茶。 無農薬で健康に育った茶の木から、今年伸びた数10センチの枝を鎌でざくざく切り取っていました。
「卵焼き」のような色の良質のカビ
一次発酵後さらに選別
切り取った枝付茶葉は、大きな桶にぎっしりと詰めて時間を掛けて蒸しあげます。 蒸しあがった枝付茶葉はムシロに広げ、手早く枝や混ざり物を取り除きます。 そして一次発酵(カビ付け)のための室に隙間なく積み上げ、一日に数回もの温度管理をしながら何日間かは発酵状態を見守っていきます。
「卵焼き」のような黄色いカビが付けば良いそうです。 一次発酵後、さらに混ざり物がないか選別をし、1メートル以上もある大きな桶に隙間なくぎっしり詰め、桶の上にはコンクリートブロックを50個も乗せて重石をし、二次発酵させます。
選別後は桶に漬け込みます
二次発酵用の大きな桶
隙間なくびっしりと詰め込みます
二次発酵が完了したら、天候をみて乾燥させるのですが、この頃はだいたい夏の土用の頃で、よく晴れた日に3日間、太陽に当てるとカラカラに乾き、碁石茶が出来上がります。
「今日は干す」という日に訪ねていったときのことでした。 車を止めると「お寿司を作っている」ような甘酸っぱい懐かしい良い匂いが漂ってきます。 今日は小笠原さんちはお寿司かな・・などと思いながら入っていき、そのことを言うと、それは干したばかりの碁石茶の匂いでした。
みんなで楽しくお茶の時間
人間の五感を働かせ 手作業をしてきた手
作業している方たちは、「私らは慣れているのでわからんねえ」とのことでしたが、良いお茶は良い匂いがするそうで、今年は非常に出来が良いとのことです。
ところで、なんで「碁石」なのでしょう? 二次発酵で茶葉は桶の中で、びっしりと固まってくっついています。 大きな刃物で切り分けて少しずつ桶から出し、さらに2〜3センチの厚さに捌き、まな板で3センチほどの塊に切ったものを、一面に敷いたムシロに干すのですが、それが碁石を並べたように見えるからでしょう。
茶葉が沈み込んだ桶からは
お茶のエキスと発酵菌がびっしり
自宅前庭に干した碁石茶
こうして今年も無事生産を終了した碁石茶は、1キロずつ箱詰めにして予約の人に送られ、残ったお茶も例年、年内に完売になるとのことです。
ところで、麗は今年初めて小笠原さんの碁石茶を飲みはじめました。 煮立てた後、冷やして飲んでいますが、ちょっぴりの酸味と独特の発酵の匂いがし、慣れると癖になる味わいです。
下からの湿り気を防ぐため ムシロの下には藁を敷いてあります
吉野川を挟んで向こうに見えるのは梶が森
実は麗は相当な健康オタクでいろいろやっていますが、碁石茶を飲みだしてから腸内環境が非常によくなったような気がします。
碁石茶についてのお問い合わせをご希望の方は、下記までどうぞ! 〒 789−0232 高知県長岡郡大豊町梶が内676 小笠原 章富 さん TEL・FAX 0887−73−0288 麗
今年の碁石茶もよくできて喜びの小笠原さん
箱詰め
よく乾いた碁石茶